日本の独立系ファンドの先駆者がFIREに物申す
3月21日付の日本経済新聞電子版に、さわかみ投信会長の澤上篤人さんの記事が出ていました。
記事の内容を3つの論点にまとめると、
1.FIREが流行っているのはバブルである
2.人は利益よりも損失の方により痛みを感じる
3. 経済的自立は人生の目標ではない
になります。
それぞれについて見ていきましょう。
FIREが流行っているのはバブルである
澤上さんはFIREが流行っているのはバブルだと言っています。
澤上さんが考えているFIREに必要な資金は3億円です。
この3億円の株式からの配当が年540万円、税引き後手取りが約430万円としています。
これはFIREしようと考えている方が考えている数字と、大きく食い違っています。
理由は、澤上さんがFIRE後の収入を、東証一部の予想平均配当利回りである1.8%をもとに計算しているからです。
あくまで日本株に全額投資し、その配当で生活するという前提です。
FIREを目指す多くの方が想定している4%ルールではありません。
たしかに私たちは日本円を使って生活しているので、日本株式の配当ベースで考えることも間違いとは言いません
しかしFIREを目指す多くの方は、外国株をメインに保有しているのではないでしょうか。
そもそも、澤上さんの言うような配当収入だけでFIREできる方は限られます。
FIREを目指す方の多くは、4%ルールで資産を取り崩を予定しています。
ここに澤上さんの認識とのズレがあります。
次にFIRE後の生活資金である430万円を考えてみましょう。
「生活費が安い地方ならば家族持ちでも暮らせるが、決して楽な暮らしではないだろう」と澤上さんは言っています。
ご自身は430万円から社会保険料を引いた額では、楽な暮らしとは思えないようです。
しかしここにも、FIREを目指す方とズレがあるようです。
FIREする方にとっては、月額30万円もあれば十分ではないでしょうか。
そもそもFIREを達成するには、生活費を下げることは不可欠です。
澤上さんの話には、この生活費を下げるという視点がスッポリと抜け落ちています。
人は利益よりも損失の方に痛みを感じる
これはまさに澤上さんの仰るとおりです。
人間は損失を被った時の方が、利益を得たときよりも2.5倍大きく痛みを感じると言われています。
FIREを目指す若い世代は、この十数年の堅調な株式相場しか知りません。
つまり、株式相場の暴落に直面し、大きく資産額が減少する経験をほとんどしていません。
資産を取り崩す段階になったのちに、株式相場が暴落し、生活費の原資となる資産が大きく減少する痛みに耐えられるのかと澤上さんは問います。
痛みに耐えられるかどうかは実際に経験してみないと分かりませんが、想像以上に辛いものであることは確かです。
ですからFIRE直後の暴落時に備えて、現金をある程度持っておくことは重要です。
リスク資産が多すぎないか、もう一度資産配分を考えてみましょう。
経済的自立は人生の目標ではない
経済的自立自体を人生の目標とせず、本当の人生の目標を立てるための経済的自立である。
まさしくその通りだと思います。
澤上さんは、FIRE達成後の目標が重要だとしています。
FIREを達成してできた自由な時間があるからこそ、自分が本当にやりたいことに挑戦できるのだと思います。
FIREを目指しているときから、達成後の目標についても考えておきたいです。
また澤上さんは、長期投資はFIREの道具ではなく、より良い社会を作っていこうとする企業を応援するものだと考えています。
それはそれで投資家として立派な考えだと思います。
しかしFIREを目指してインデックス投資をすることでも、企業を応援することはできます。
インデックス投資の資金も経済を回し、私たちの生活をより良いものにしていくことに貢献しているのです。
まとめ
今回は澤上さんのFIREに対する考えについて見てきました。
日本の独立系ファンドの草分けの方のご意見は貴重です。
もちろん同意できる点も、そうではない点もあります。
しかし、時にはFIREに染まっていない方の意見を聞いてみることで、新たな気づきを得られるかもしれません。
今日も良い一日です。ありがとうございます。
コメント